近年,政府機関,自治体,公共団体などの情報開示がすすむなかで,大学においても様々な情報の公開が望まれている.
従来,公開のための情報の取りまとめは,調査文書の配布,職員がそれに記入という方法をとっていた.
そのため,たとえ同様の公開情報のための調査であってもその都度記入作業が必要であり,また調査毎に様式が変更されるため様式を変更して記入するための手間が必要であった.
また,書面による調査は,最終的に書面からワードプロセッサなどへの入力作業が発生し,事務(もしくは,教官,技官)の作業負担となるほか,入力誤りの検査のために校正刷りの確認作業が必要となる.
このような作業は,年々増加の傾向にあり,全体の職務のなかで次第に大きな割合を占めるようになっている.
一方,情報工学の分野ではネットワークを介して情報を共有,管理する技術が進展していることは周知の事実であり,本学の職員がいつまでも書面による作業負担に関わっていることは社会的な水準からみて時代遅れである.
データベースソフトウェアなどを用いてネットワークを介して情報を管理,共有することの利点としては,
- 入力作業負担の分散
- 入力作業を分散させることにより,特定の部署に作業が集中することがなくなる.
これにより調査開始から情報の取りまとめまでの期間を短縮することができる.
また,個々の情報を,その情報に一番関係深い個人が入力することにより,単純な入力ミスの回避,および入力データの確認を行なうことができる.
- 情報の再利用
- 一度入力した情報は当然再利用できる.
調査の際に足りない情報のみを新規に登録するだけでよい.
- 情報の表現様式の統一
- かつて,フロッピーディスクや電子メールを用いた調査が行なわれたことがあるが,ディスクに格納されたファイルやメールの添付文書の様式の不一致が情報収集者を悩ませる結果となった.
- 情報の即時性
- 従来,情報の公開は1年から数年のサイクルで行なわれ,また,調査から公開までは数ヵ月の期間が必要なため,公開時には既に情報は古くなっている.
データベースから公開情報を作成する作業を自動化することによって,常に最新の情報を公開することが可能となる.
- インターネット上への情報公開促進
- 前項とも関連するがWWW等のメディアに情報を変換することによって,従来手作業で行なっていた,Web頁の作成を自動化することができる.
などがある.
我々ワーキンググループは,本学の情報を一つのデータベースにより管理し,必要に応じて情報を取り出すシステムを構築している.
本稿は,現在作成している徳島大学教育・研究者情報データベースの概要を述べたものである.
組織の情報をデータベースにより管理し,公開する際には,情報の信頼性を考慮しなくてはならない.
- 情報の履歴
- データベースの登録情報が「何時」,「誰によって」,「どのように(登録)変更された」を履歴として保存する必要がある.
特に,利用者が学部教職員のように多数にまたがる場合,情報を登録(変更)した人物を特定することは重要である.
事後において情報の操作者を特定できることにより,無責任な情報登録が減少し,全体の情報の信頼性を向上させることが可能である.
- 情報の権限
- 一方,登録されている情報の変更権限を各情報に付加しておくことも必要である.
大学において悪意のある情報改変は少ないと思われるが,操作の誤りによって目的外の情報を変更してしまう可能性を減らすことができる.
- 統一された様式
- データベースから情報を取り出し目的を果たす(冊子の編簒,統計情報の作成,他)には,登録情報が統一された様式により作成されていることが必要である.
- 情報の識別性
- データベースに登録されている情報を分類する際に,情報を正しく分類することが必要である.
例えば,論文などの著者による分類を行う場合を想定すると,人名には同姓同名の問題があるため,人名そのものによる分類には信憑性がない.
- 記述の統一性
本節では,現在構築中のデータベースの目標としている特徴について述べる.
- アクセス方法
- WWWによる情報登録/修正
- whois/TCPポートを利用した情報の取り出し.
- 通知システム
- E-mailによるnotification: 他者による登録情報の修正が発生したときに,情報の所有者に電子メールを用いて通知を行なう.
- データ様式
- 英文,和文,和文読み
- 追記型登録
- 変更履歴の保存.
- 本データベースは登録情報の削除を行なわない.
- 登録・修正された情報は全て履歴として保存し,誰が,何時,どのような登録を行なったかを全て保存する.
- 削除の変わりに情報の無効化の機能を提供する.
- 参照型データ登録
- 同じ情報は複数のデータにまたがって登録されない.
- 登録情報の分類は,各登録者の責任による.
- セキュリティ
- SSL(https)による通信路暗号化
- パスフレーズによるユーザ認証
- パスフレーズ認証は,主にデータベースへのアクセスの可否を認証するために利用する.
- 言い替えると,データベース入口部分のログイン手順におよびアクセス不可な情報のチェックを個人認証により実現しし, データの登録・修正は情報の前登録者,所有者に通知することで,登録データの確認作業を行なう.